こんにちは!
管理部の金杉です。
暑い日が続いてますね。
今日は少しだけ皆さんにひんやりした気分になっていただこうと思います。
約15年ほど前に、新築戸建専門の不動産会社に勤めていた頃の話です。
自分より10歳年上の〇山さんという方が入社しました。
少し変わった人で、霊が見えるというのです。
私は霊の存在は信じていないので、話半分で彼の話を聞いていました。
退勤後、駅までの帰り道を彼と一緒に歩いていると、
突然彼が私の肩を掴んで「こっちを歩いてください!」と真剣な表情で私に言いました。
「どうしました?」と問いかけると、「そこに良くない雰囲気の女の人が立っているんで危ないです」
と彼は答えます。
ちょっと面倒くさい人だなぁと思いながら、彼の霊を見ている表情を観察してみると面白いと感じました。
不動産会社に勤務していると、多くの人と接するので
嘘をついている人の表情はなんとなくわかるようになってきます。
〇山さんの表情は、本当に何かを目で追っているような顔付きだったんです。
演技しているようには見えませんでした。
私も彼が見ている方向を目を凝らして見ましたが、なんにもありません。
電柱が立っているだけでした。
翌日の朝、朝礼が終わったのに〇山さんが出勤してきませんでした。
電話も繋がりません。他の営業マンはとっくに新築戸建販売会の現地へ出発しています。
すると、入口のドアがバタンと開いて〇山さんがものすごい勢いで入って来ました。
しかも真っ青な顔をしています。私は驚いて言いました。
「〇山さん!どうしたの?何かあった?」
私は思いました。きっと〇山さんは何かたいへんなモノを見てしまったんだろうと。
気分の悪そうな彼は黙ってスタスタとトイレに行きました。
しばらくしてトイレから出てきた彼に言いました。
「〇山さん。気分が悪いなら、社内で休んでなよ」というと
「大丈夫です。金杉さん。社有車で現場に向かいます」
そう答えて、2階の店舗入口から1階へ階段を駆け下りて行ってしまいました。
「………。」
去っていく彼を見て、私はおかしなことに気づきました。
〇山さんは腰のあたりを手でおさえながら、おかしな歩き方になっていました。
昨日の女の霊が彼に憑りついてしまったかもしれません。
彼が去ったあとに階段の上に、ポツンポツンと何かが落ちています。
私は階段面にかがんでそれを見たあと思わず叫び声をあげてしまいました。
階段の上にあったものは、く、
「くそ」でした。
どうやら彼は見たわけではなく、ただ間に合わなかっただけみたいでした。
階段をかけぬける便臭を帯びた風を感じながら、私は茫然と立ちつくしていました。
完